生活保護制度について(前半)
これから生活保護制度についての説明をしていきたいと思います。
「生存権」って言葉、みなさん聞いたことありますよね。
この、憲法25条によって保障されている「生存権」を実現するための制度の一つとして制定されたのが、生活保護制度です。
つまり、生活保護制度は「国民の権利」として認められているんですよ。
また、生活保護制度は、単に生活が立ち行かなくなっている方に対して、保護費を支給し最低限度の生活を保障するのはもちろん、それに加えて、生活が立ち行かなくなっている方の自立の助長を図ることも目的としています。
「お金をあげたんだからそれで頑張れ!」
って制度じゃなくて
「お金はあげます。そのお金や各種サービスを利用して、生活を立ち直らせるために一緒に頑張っていきましょう。国も色々なサポートしますよ!」
みたいな制度だと思っていただければと思います。
そんな生活保護制度の大原則として8つの原理・原則があります。生活保護制度のすべてに共通する制度、すなわち「万物の祖」ともいえるものなので押さえておきましょう。
●国家責任の原理(生活保護法1条)
国は生活に困窮するすべての国民に対して、その困窮の程度に応じて、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とするといったものです。
「生活が困窮している人に対して、予算がない!と言って生活保護を受給させないなどといったことは許されない」
たまに生活保護についての議論で「予算がないんだから生活保護受給させなくてもよいじゃん。役所の水際作戦の何が悪いの?」みたいなことをおっしゃる方いますが、法律レベルで「予算がないから、は言い訳にはならない」と言ってるんですよ。きちんと法律を読み込んで、その趣旨を斟酌してから批判はしましょう。
●無差別平等の原理(生活保護法2条)
すべての国民は、生活保護を受給できる要件に当てはまる限り、保護を無差別に受けられますというものです。
昔の生活保護みたいな制度には「欠格条項」というものがありました。素行不良な人は保護を受けられないみたいな感じのです。欠格条項は非常にあいまいな規定だったので、そのせいで保護を受けられない人も出てきました。おかしい時代でしたよね。
現在は欠格条項はなくなりました。素行が悪くても(ただし暴力団のような反社会的勢力は駄目ですよ。元暴力団であれば大丈夫です)、年齢がいくつでも、性別がどうだろうと、生活保護に陥った原因がなんであろうと、保護は受けられます。それを規定した原理です。
●最低生活の原理(生活保護法3条)
●補足性の原理(生活保護法4条)
生活保護は、生活に困窮する人が、その利用しうる資産、能力、その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われるというものです。
つまり、資産(高級時計とか高級車)とかを持っているのならば、それを売却して生活費にまわしてください、といったことです。使える資産があれば活用してくださいっていう意味ですね。
●申請保護の原則(生活保護法7条)
生活保護は、保護が必要と考えられる人などからの申請に基づいて開始するものとするといったことです。
このように、基本的には保護が必要と考えられる人などからの申請に基づいて開始するものとなっていますが、申請がなくても、保護をすることが必要で急迫した状況にあるときには、生活保護の申請がなくても必要な保護を行うこともできます。
また、生活保護を申請する意思が確認された人に対しては、申請を受理する義務が役所側に発生します。もしあなたが生活保護の申請に行き、役所の人に「申請は受理できないねえ」と言われた場合には徹底的に戦ってください。
それは法律上認められた保護の申請権の侵害です。
●基準及び程度の原則(生活保護法8条)
生活保護は、厚生労働省の定める基準により測定した要保護者の需要を基準とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとするといったものです。
意味が分からない…?私も最初読んだときはそう思いました笑
例えば、月の生活保護基準額が13万円の人がいたとします。その人は年金収入が月に5万円ありました。年金が月5万円だと、月の生活保護費には8万円足りないですよね。その足りない8万を役所から支給するといったことを定めています。
つまり、厚生労働省で定められた基準以下の収入しかない場合には、その不足分を支給しますよってことです。
※例外?として就労収入がある場合の控除というものがあります。それは追々説明します。
●必要即応の原則(生活保護法9条)
被保護者ごとに個別的に生活保護制度は運用されなければならないってことです。
生活保護制度を運用する役所の主体は「ケースワーカー」といいます。
●世帯単位の原則(生活保護法10条)
同一の住居に居住し、生計を一にしている場合には、それを一つの世帯と認定するといったものです。
例えば、同一の住居にAさんとBさんが住んでいました。Aさんは無職で、Bさんは月収100万稼いでいたとします。
この場合、Aさんのみが生活保護を受給することはできません。
世帯単位の原則とはそういったことを定めています。
例外として「世帯分離」というものもありますが、のちのち…。
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